カテゴリー「詩」の記事

2010年5月 9日 (日)

詩「桜だより」  コールサック66号より

雲まで桜のいろで
青空は新入生の遠足の声のようで
光の川は慣れないスーツを着た若い女性のようで
お別れがあの人この人にやってきて
出会いがあの人この人にやってきて
四月の休日
まちの郵便ポストはちょっぴり寂しそうです

海へ向かう電車には
まどろむ夢にまぎれて
忘れていた追憶や
小さな心配ごとや
漠然とした計画などが入りまじり
窓の外の桜とともに
どこか遠いところへ入っていくような
そんな一日です

文庫本を忘れたら
行楽客の家族連れの幼いこどもを見ます
おさるさんのような
大詩人

たどたどしい言葉の
いのちの行間が
こども出身の胸に
愛する心を思い出させてくれるのです

電車はすすみます
桜はゆっくり舞っています

人生はどうなるのでしょう
世界はどうなるのでしょう

これを読む人が誰か知らないけれど
今日あなたもほろ苦い何かにしんみりしているならば
明日の海へ向かう夢の行間に
そっとほほえみをこめて
まちの郵便ポストから
桜降り注ぐ青空をおくります

| | コメント (0) | トラックバック (0)

詩「モンタージュ」  コールサック66号より

壁、ベルリン
監視カメラ、盗聴器
市民、秘密集会
壁の跡、ベルリン
冷めた目つき、ショウウインドウ、札束、バラバラの雑踏
自転車でブランデンブルク門を帰る元東側おじさんの
ため息と、背中

アラビア文字
モスク、礼拝する人たち
空爆
廃墟
血だらけの少年の泣き顔
石油産業の現場
星条旗

プサンの丘のイ・スンシン像
玄界灘
血走った顔、豊臣秀吉
朝鮮人の耳、陶磁器
大日本帝国の役人、学校の日本語授業
朝鮮人、田畑から連れ去られ、船、日本の工場
独立運動家、銃殺
プサンの丘のイ・スンシン像
夕焼け、キムチ、キムチ、キムチ

ガジュマルの樹、風の音、サンシンの調べ
青空、広い海
ゴーヤーチャンプルー
米軍基地立ち入り禁止
戦闘機
開票結果に万歳する基地反対派の人たち
開票結果を無視する政府要人の発言が載った新聞

カードローン無人自動申込機に並ぶ若い人たち
さまざまな偏差値表
ハローワークの混雑、〈失業〉の文字
空からの映像、深夜の大都会
ネットカフェ個室ボックス
いびきの音

〈絶望〉の文字、〈夢〉の文字、交互に映り
いびきの音が続く。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

その他のカテゴリー

現代詩時評・展望 |