« 新詩集を上梓いたしました | トップページ | コールサック78号刊行しました »

2013年12月25日 (水)

詩誌「コールサック」77号編集後記と詩です

詩誌「コールサック」77号が刊行されました。

新年には年刊購読会員の皆様や参加者の皆様のお手元に届くと思います。

432ページに及ぶ、充実の号です。

ご関心のある方々に、ぜひ、ひろく読んでいただきたいものです。

http://www.coal-sack.com/syosekis/view/1326/

私の「編集後記」と詩2篇を下記に再掲します。

各地の皆様、2014年もどうぞよろしくお願いいたします。

編集後記           佐相 憲一

 うれしい悲鳴から報告しよう。今号コールサックはまたひとつ新しい扉を開いた感があって、しめきり前から続々と寄せられる原稿の全体に詩誌の勢いを感じた。編集した自分で言うのも何だが、いま当誌は本当に充実していると思う。このところ、新しい参加者も次々と増えて、いい刺激になっている。時代の声、社会の声、内なる個の深みの声。作風も多様で、現代詩の舞台でこうしたさまざまな傾向の詩人たちが一つの全国誌につどっているのは、詩の世界の硬直化や時代の閉塞に抗する光と言えるのではないだろうか。一つの枠に閉じこもらないという旺盛な編集方針でアンテナをはりめぐらせて実践してきたが、参加諸氏とこの成果を世に出せるのは喜びだ。
 
 うれしい悲鳴によって、今回掲載予定だった二つの記念会記録のうち、「第三十二回・池袋モンパルナス小熊秀雄長長忌」の方を次号の七十八号(四月末刊)に回すことになった。苦心した録音データの文字起こしも終わり、研究保存版としての貴重な価値をもつ中身の濃いものができあがったのだが、楽しみにされていた方々には春の号までしばしお待ち願いたい。
 なお、宮川達二さんの連載・小熊秀雄研究は今号にも載っていて、好評のうちに九回目となった。

 ベトナム記念会記録はしっかりと載せられた。三十ページに及ぶ熱いつどいの様子をぜひお読みいただきたい。また、関心のある方々にはこのベトナム・アンソロジーをひろめるのにご協力願いたい。この本はベトナム国営放送でも紹介され、読んだ日本の方々からも大変貴重だと好評をいただいている。
 
 新しい寄稿からご紹介しよう。ニューフェイスの長谷川千夏さんと川端真千子さんは、いまを生きる若い女性のそれぞれの感性で新鮮な詩を寄せてくれた。そこにはひりひりする時代の渇きと、その中からの願いの潤いが、個の内側からつづられている。ちょっとクールな吟遊詩人といった感じの長谷川さんの作品は街の深淵を見つめて切実だ。地球生物的な大きな視野ももつ川端さんの作品は生き生きとした語りの中に命の切実な声が響いている。この二人の才能を紹介してくれたのは二年前の詩集『厚い手のひら』がいまも好評な常連の井上優さんで、今号にも優しい語り口で鋭く突き刺さる批評性をもつ作品を寄せてくれた。それから、三重県の村山砂由美さんも今号が初参加で、いきなり深く考えさせられる新鮮な詩を寄せてくれた。小詩集にいきなりの傑作「4コマ詩集」で初登場したのは原詩夏至さん。彼は現代詩、短歌、俳句、小説、エッセイのどの分野にも道をもつ文学の鬼才である。大阪の大ベテラン、松本一哉さんが参加してくれたのは心強い。伝説の詩誌「列島」時代からの筋金入りの詩人である。
 このところ新鮮な息吹を送ってくれている北海道の若宮明彦さん、大阪の船曳秀隆さん、市川紀久子さん、東京の山口修さん、奥主榮さん、北原亜稀人さん、高畑耕治さん、福岡の植田文隆さん、榊原敬子さん、坂本梧朗さん、茨城の一笑圓太郎さん改名して羽島貝さん、京都の中村純さんと奥憲太さん、千葉の福山重博さん、群馬の中村花木さん、沖縄の速水晃さん、神奈川の洲史さん、埼玉の山崎夏代さんらもそれぞれの作品で健在である。
 岡山の武中義人さん、茨城の磯山オサムさん、青森の未津きみさん、大阪のやまもとれいこさん、埼玉の高嶋英夫さんらが久しぶりに参加してくれた。力作群だ。
 また、この数年間に新鋭こころシリーズ詩集を刊行した中林経城さん、尾内達也さん、平井達也さん、松尾静子さん、亜久津歩さんらの作品はますます新鮮で、いまではコールサックに欠かせない執筆陣となっている。
 今年コールサック社からそれぞれに大切な詩集や詩選集を刊行した木島章さん、関中子さん、武西良和さん、うおずみ千尋さん、秋野かよ子さん、田島廣子さん、外村文象さん、松本高直さんらは、詩集刊行を力にますますそれぞれの世界を追求している。
 福島の詩人たちは以前続く困難な状況に負けずに書いている。今号にはみうらひろこさん、根本昌幸さんが詩作品を、芳賀稔幸さんがエッセイを寄せてくれた。東京在住の青木みつおさんも東北連帯の詩作を続けている。いつも鋭い中原かなさんは今号で被災地をも想像させる作品を寄せてくれた。
 関西が生んだ世界的詩人・有馬敲さんがこのところ続けて力作を寄せてくれるのがうれしい。
 そして、ずっとコールサックを支えてくれている常連のベテラン勢の健筆ぶり。崔龍源さん、結城文さん、淺山泰美さん、平原比呂子さん、下村和子さん、山本聖子さん、吉田博子さん、酒井力さん、鳥巣郁美さん、山佐木進さん、村永美和子さん、貝塚津音魚さん、こまつかんさん、豊福みどりさん、青柳晶子さん、杉本知政さん、皆木信昭さん、石村柳三さん、田中作子さん。コールサック社代表の鈴木比佐雄さん。
 高橋郁男さんの連載詩論は一回目から大変好評だった。今回二回目。世界の詩の歴史を共に追う読書は楽しい。黄英治さんの連載小説もますます熱が入ってきた。ヘイトデモと反ヘイトデモをめぐる若者の精神状況がリアルだ。翻訳で大活躍の中島登さん、権宅明さん、李美子さん、監修の佐川亜紀さん、エッセイを寄せてくれた矢城道子さん、三浦輝夫さん、千葉勇吾さん、崔仁浩さん追悼文の井手俊作さん、詩人論の尾崎寿一郎さん、に感謝。
 最後に、ゲストとして書評執筆の依頼にこたえてくださった皆さんに、心から感謝御礼申し上げたい。
 
 さて、扉詩の松本高直さん「私は秘密」と、十二ページの勝嶋啓太さん「特定秘密」をご覧いただきたい。緊迫した中から生まれた切実な作品である。両氏のとびきりの皮肉がきいた風刺の詩に、時代に立ち向かう勇気をもらいたい。このままファシズムがすすむ事態を何としても止めて、表現の自由と命が大事にされる社会にしたい。それは詩の心が大切にされる世の中である。
 二〇一四年、皆さんと共に詩の馬を走らせたい。 

 街角             佐相 憲一

街灯がアスファルトに散らばる
枯葉が光る
老いた男女が身を寄せて
ルオーの絵の道化師みたいな笑顔を見せている
彼らが誰なのかぼくは知らない
わずかな年金で暮らす夫婦
わけありの愛人
地域で出会った孤独者同士
あるいは互いに伴侶を亡くした最後の恋

ぼくは珈琲をすする

平日の夜はまだ遅くないから
ジキルとハイドが街にあふれる
若者に疲れた顔が多いのは時代そのもの
限られた財布に精いっぱいの見栄を張って
おしゃれする若い子たちがいじらしい

願いの珈琲をもう一杯

そんな中を生きてきたのか
老いた男女の微笑みのしわ
かつての少女は薔薇を頰に浮かべて
〈幸せ〉とはこの瞬間の彼女のことだ

肩を抱く男の様子がサマになっている
女は少し甘えていま寄りかかった

ぼくはまた見てしまう
人は死ぬということを

この最高のカップルは
あとどれだけいっしょにいられるだろうか

おばあさん
すてきですよ
おじいさん
かっこいいですよ

珈琲が体にしみ入る夜
ぼくは愛するひとにメールを送りたくなる
〈いのちある限り〉
それは映画のセリフじゃなくて
人間の生きた現実のためにある

 街角 Ⅱ

凍えるのは優しさがまだあるからで
口ごもるものが内側に醗酵していくから
乾燥した街で水分をもつ夢の数々
いま横断歩道を渡った人影に
いつかどこかのかげろうが
遠い国々の風を伝える
あのいわし雲はノスタルジーなんかじゃない
かなしいメロディのCDなんか衝動買いして
そんな人たちへの宇宙のメッセージ
焼けているのは心の何か
きっと大丈夫だ
ぐっとのみ込んだ
ひとりひとりの夢の充電

誰が住むのかはっきりしない集合住宅の
どこかから聞こえてくる異国の言葉
国際電話がはらはらと
お母さん、お父さん、大丈夫
そう言ってるようには聞こえない

仕事帰りの深夜ビラを配る
この国が古い道へ戻らぬように

騒然としたアジアのいま
平和憲法という文字はどう映る
イカレテル?
いや
イカシテル
そう願って

背負っているものを聞きあって
心かよわせる時
微笑みにしみるもの
湿気とは違う
潤いの旋律
うまく言えなくたっていい
人間はわかりあうために生まれてくる
殺しあうためじゃない

寒冷前線の街角に
内なる音楽がしみこんで
たたかいの中に
新しい年がやってくる

|

« 新詩集を上梓いたしました | トップページ | コールサック78号刊行しました »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1367234/54373155

この記事へのトラックバック一覧です: 詩誌「コールサック」77号編集後記と詩です:

« 新詩集を上梓いたしました | トップページ | コールサック78号刊行しました »