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2014年4月28日 (月)

コールサック78号刊行しました

「コールサック」78号・編集後記   佐相憲一

 このところ毎号新たな活気をお伝えしているが、今号もまた、新しい詩人の参加が相つぎ、あまりの熱気にページ数が足りなくなった。よって、前号と同じ最大限のページ数にしながら、少なくない投稿作品が掲載見送りになり、すぐれたものも次号回しにせざるをえなかった。編集者としてはうれしい悲鳴であるが、この詩文学の熱気を参加詩人たちも感じとっていただき、ベストな形での原稿発表に向けて気を引きしめていただきたい。
 当誌はすでに仲間うちの詩誌ではなく、ひろくいまの日本の詩の世界と、マスコミも含めた一般社会に伝えられている全国詩誌となっている。社会の中で時代に立ち向かいながら、表現傾向やテーマの多様性、芸術観の多様性をひろく包含する、生きた詩誌として、今後も諸氏と力を合わせて発展させたいものだ。
 発展状況を受けて、編集の上で変更があるのでお伝えする。四一八ページの「原稿募集」欄をご覧いただきたい。しめきり日と発行日の変更である。原稿が届いてからじっくりと編集できるように、しめきりと発行の間に二か月近くの期間を設ける。また、年末年始やゴールデン・ウィークと重なっていた月末の発送を月の二十日発行に早める。ゆとりをもっていろいろな相談も可能になり、企画も入れやすくなるだろう。さっそく次号からの日程なので、ご注意を。七十九号のしめきりは七月ではなく、六月末日(三十日)となる。発行は八月二十日だ。諸氏の力作をお待ちする。詩はもちろんのこと、評論・エッセイなども大歓迎である。新参加される方は四一八ページにシステムも書かれているので、この要領でぜひ新鮮なものをお寄せいただきたい。
 今号に見るように、増えている若い世代の書き手と、人生ベテランの書き手が、作品を通じていまの世のさまざまな内面や状況を伝えるなかに融合されることは、今後の日本の詩文学を考えても大切なことだ。「若い人がいない」と詩壇や各地の詩界が嘆くとしたら、それはいまの世の中にあふれている「詩を必要とする人びと」の実態を見ていないと言わざるをえない。高齢の新鮮な書き手だけでなく、若い表現者もまた大勢いるのであり、きっかけと結びつきの場を求めているのである。一部のベテラン勢が硬直化したエリート主義で日本の詩の可能性をせばめたり閉ざしたりしているとしたら、かなしいことだ。あるいは世代的一体感のある人びとが、孤立分断の傾向にある若い層ひとりひとりの内なる叫びを個人として尊重しないとしたら、かなしいことだ。当誌はこれからもそういう閉塞感を打ち破るために、ベテラン詩人の貴重な仕事と共に、新しい才能の光も積極的に応援していきたい。
 今年の表紙写真は詩人の奥主榮さんにお願いした。今号の写真に〈詩〉を感じる。樹の陰からこちらを見つめる猫の、何とも言えない眼だ。愛らしく鋭いその眼に人間の様相がじっと見られているようだ。
 〈大切なものを見つめて/詩の心、いま〉としたが、扉詩と三つの章に分けた詩群、小詩集の詩群からは、いまの世の中で生きる人びとのそれぞれの切実な声が伝わってくる。
 高橋郁男さんの連載詩論「詩のオデュッセイア」もついに近代ボードレールまで来た。古今東西の壮大な詩の歴史の中に日本の詩歌をおいて大切にする氏の視点は、偏狭なナショナリズムの台頭著しい昨今において、すがすがしい希望をくれる。
 宮川達二さんの連載「小熊秀雄研究」は今号で十回目、ひとまずの最終回を迎えた。この小熊論には連載開始当初からひろく好評の声が寄せられ、当誌の目玉評論のひとつだったが、戦前の反骨詩人の作品世界と人生を、自ら歩いて調べた独自の視野で論じた氏の仕事にあらためて敬意をおくりたい。
 その小熊秀雄を偲ぶ池袋モンパルナスの会〈長長忌〉が昨秋も開かれた。前年同様、その再現記録をたっぷりと収録した。アジア諸国との関係が悪化し、国内の平和世論の多様な現状も無視して改憲にひた走る現政権の下、戦前の軍国主義時代にアジア連帯と反戦を貫き、独特の詩の面白さで光る小熊秀雄の詩世界に学ぶことは、特別の意義があると考える。これからもさまざまな先達詩人の詩世界と足跡をたどりたいものだ。
 そういった意味で、この新春にコールサック社から刊行された三冊の詩論集は貴重な労作と言えよう。新藤謙さんの『人間愛に生きた人びと―横山正松・渡辺一夫・吉野源三郎・丸山眞男・野間宏・若松丈太郎・石垣りん・茨木のり子』、稲木信夫さんの『詩人中野鈴子を追う』、前田新さんの『土着と四次元―宮沢賢治・真壁仁・三谷晃一・若松丈太郎・大塚史朗』の三冊である。いずれも好評だ。たとえば、稲木さんの中野鈴子論はすでに「東京新聞」「福井新聞」「日刊県民福井」「週刊きたかみ」「しんぶん赤旗」「週刊読書人」に書評が掲載または掲載予定である。日本図書館協会の選定図書にも指定され、書店でこの本を買って読んでくださった一般の方々からは研究に関する熱心な問い合わせもある。こうした本格的な独自の詩論・詩人論集を大切にして今後も世に伝えていきたい。
 ジャンルをこえた文芸運動という点も発展している。俳句や短歌関係の出版が好評のうちに増えているが、小説集の刊行も六冊になった。ひろい意味での〈詩の心〉を大切にして、日本の文芸を一部の大手出版社だけの世界にしない広範な可能性を探りたい。詩の専門出版社でありながら、文学全般のなかに詩も位置づける視点を大事にしたい。
 新アンソロジー『水・空気・食物詩集350篇』には個性的な作品が続々と寄せられている。追加公募を五月二十日までとしたので、ひろくご参加いただきたい。
 また、参加詩人限定の合同詩集『現代の風刺詩25人詩集』『現代のネット詩40 人詩集』(共に仮題)も企画編集進行中である。いまの詩の世界に刺激を与え、さまざまな角度から詩をひろく人びとの胸に届けるための努力を続けたい。 
 世論調査では、「集団的自衛権」などという詭弁に多くの国民・市民が反対している。いまに「集団的国防軍」などと言い出しそうな好戦勢力。最近、首相の中東・アフリカ訪問には日本の大企業が同行した。軍事同盟を背景にした金儲け世界進出には武器輸出も含まれる。緊迫した情勢だが、私もよびかけ人をしている「九条の会・詩人の輪」は今年が十周年だ。東アジア情勢にはさまざまな意見があろうが、少なくとも戦後の詩文学の原点である命の視点、侵略戦争直視と世界平和への理想を捨て去ってはならないだろう。武力の対極にある〈詩の心〉を見つめたい。

「コールサック」78号発表の詩

絵葉書         佐相憲一

切手はいらない
手渡すのだから
この手で書いた
文字のつらなりで
心を伝えるのだから

言葉は浮かんでくるけれど
自分で絵はかけない
思いの象徴を選んで
風景写真、絵画、イラスト
便りを読みながら眺めれば
映画音楽みたいな効果があればいい
こんなふうに
第三者が仲だちしてくれるのもいい

会うたびに
絵葉書を手渡すから
言葉のアルバムが歳月をつなげてくれる

電子文字に慣れた日常に
直筆の筆跡が届けるもの

一枚限定の小さなカードが
たったひとりと
たったひとりの間に
生み出す力

微妙
という言葉は好きだ
七十億人の中で出会った七百万年の
ふたつの来歴
空を見上げてそれぞれの奇跡を思う時
文字に託された
微妙なところ
それを大切にしたいから

小学校では漢字を覚えるのが楽しかった
不思議な形の小宇宙
中学ではアルファベットに夢中になった
外国のうたをノートに再現
高校では表現と言葉の哲学に魅せられた
実践して文学の門をたたいた
大学時代から青年期
労働の場で人生の言葉を聴いた
社会という得体の知れない闇に
格闘してきた人びとの口言葉が新鮮だった

あっという間のようで長かった
いま
ひらがなを覚えた頃の
カタカナを覚えた頃の
幼いときめき

ひとめぐりして
言葉が内側深くで
ざわめいている

〈字がきれいですね〉
そんな声に喜んでいた頃の無邪気な自分
新しく取り戻したっていいだろう

痛みならたくさん知ったから
その中の夢の現実をつかまえて
心を書こう

あなたに手渡す絵葉書の文字は
もちろん
愛の言葉だ 

コールサック78号 目次

扉詩  佐々木淑子   ちっちゃいかみさま 
詩   平井達也    春に            
    榊原敬子    K製麺所          
    北原亜稀人   本当は/睡/始  
    木島章     いつもの風景       
    淺山泰美    名残りの薔薇       
    有馬敲     今昔        
    羽島貝     夜行         
    福山重博    密告者/実習/治療/燕/残りのひとつ 
    川端真千子   くちばし/蛇男/照ると晴れ/うさぎと簞笥。/方角の魔女
    洲史      立ち去ろうとする少年に/少年にさようなら 
    秋野かよ子   闇の息/腐植の息      
    山口修     物語/明日     
    木村孝夫    よくないうわさ/夕餉 
    みうらひろこ  PM2・5がやってきた/長い物語のはじまり 
    根本昌幸    避難/人生一度 
    東梅洋子    うねり 故郷   
    高橋郁男    三・一一・三年        
    高畑耕治    いま、ここで       
    青柳晶子    草萌え       
    若宮明彦    Brave ―勇気の羽根―  
詩論  高橋郁男 詩のオデュッセイア―ギルガメシュからディランまで、
            時に磨かれた古今東西の詩句・四千年の旅 第三回  
詩人論 宮川達二    小熊秀雄研究 第十回(最終回) 海を越える翼  
    奥主榮   有馬敲研究「未踏の沃土」第九回 神話の形成 Ⅱ 
    尾崎寿一郎   ランボーをめぐる諸説(7)  埴谷雄高のランボー 
              ランボーをめぐる諸説(8)  飯島耕一のランボー 
              『イリュミナシオン』解読(1) 大洪水のあとで 
詩   登り山泰至   誰よりも深く/野に咲く花よ/仮面/雨は私を通過する 
    豊福みどり   空へ           
    関中子     わたしと蝶とわたしの次   
    奥主榮     野辺。曙光        
    九十現音  ボリス・ヴィアンと呼ばれたイヌ 
    中林経城    彼方           
    村山砂由美   鼓動/表と裏    
    文月咲良    心の花/夢の星    
    古城いつも   偶像製作者の独白    
    植田文隆    冷たさ/たこ焼き/消えるのかな/きれますか/あったのに
    酒井力     水の領分         
    酒木裕次郎   海辺の暮らし/水辺の生物  
    中村花木    背くらべ      
    児玉智江    ヘビになって/タヌキの弔い/つかんでいた風
    貝塚津音魚   イノシシが居なくなった/イノシシ狩猟者の業 
    鳥巣郁美    手探る日/乾いた道で 
    片桐歩     巨木が倒れる時/思想の道で 
    結城文     静止の瞬間      
    田島廣子    墓を守る         
    速水晃     行路        
    杉本知政    コロ        
翻訳詩 高炯烈詩集『ガラス体を貫通する』連載第三回 権宅明・訳/佐川亜紀・監修 
翻訳  高炯烈  (編集後記)〈詩評〉終刊の辞 詩人たちが一緒に作った季刊〈詩評〉よ、さようなら!
            権宅明・訳/佐川亜紀・監修 
翻訳詩 〈ソー・ステファンソン『あなたの光のなかで』〉  結城文・訳   
日英詩 尾内達也    アキネトン セレネース   
    郡山直     馬の新年の歌(2014年午年元日作) 
エッセイ 嶋﨑治子    天性のやさしさと理智―吉野弘さんを偲んで
    矢城道子    書くという喜び 詩について
    淺山泰美    チベットの歌声 
    若宮明彦 歌姫テイラー・スウィフトの永遠と刹那
            ―アルバム『Red』の私的(詩的) ライナーノーツ― 
    市川紀久子   ワルシャワへ行く    
    岡三沙子    万葉集      
    外村文象    八十歳の日記     
    芳賀稔幸    特定秘密保護法案の強行可決と日展不正審査を蔓延させた
              ねじれの日本人的な気質の構造とその行方  
小エッセイ集
    吉田博子   シュールな夢/昇地三郎氏逝く/入浴剤/古希を祝う 県立S高校同窓会出席 
連載エッセイ 
    うおずみ千尋  盲目の日に  故郷の風景 ―三月十一日に寄せて― 
    貝塚津音魚   里山再生を夢見て⑩/里山と農林業 
    佐相憲一    横浜にて ④    
小詩集 中道侶陽    『天と地』九篇 
    武中義人 『アンドロメダからの通信②』八篇 
    原詩夏至    『4コマ詩集(Ⅱ)(Ⅲ)』 
    武西良和    小詩集四篇 
    吉田博子    『洗う』五篇 
中村純×奥憲太 往復書簡 ③ 憲亮へ―平和のために生まれてきた私たちの息子へ― 
詩   石村柳三    《足の眼》の問い/自らの眼を誇れ/桜を見つめての思念句 
    井上優     ピエタ(序) /おいのり   
    山崎夏代    ことの葉    
    こまつかん   おしくらまんじゅう/義歯、ギシギシ   
    足立進   横浜中村町、どぶ川の横で 1 2/横浜野毛山 1
    田中作子   成人の日の花束/病葉   
    松尾静子   ラファエル前派 ダンテ・ガブリエル・ロセッティ  赤毛のリジー その三
    松本一哉   佐三という男―現在、憲法論議のはざまで
    くにさだきみ  売れない顔と花粉症 
    外村文象    ふるさとがえり  
    坂本梧朗    鬱と名月/死んでいくツムジ 
    皆木信昭    老い その3    
    山本聖子    仮面のライダー    
    勝嶋啓太    打ち合わせ/打ち合わせ(別の日) 
    平原比呂子   パタンパタン   
    栗和実     寝ていた よ      
    亜久津歩    石巻ノンフィクション・3 まとめられない現実や想いを羅列する(抜粋)
              合作/矢口龍汰・亜久津歩
    佐相憲一    絵葉書       
    鈴木比佐雄   細胞と遺伝子の殺人者 
特集記録 第三十二回 池袋モンパルナス小熊秀雄〈長長忌〉 
小説  黄英治     前夜 第三回        
解説  鈴木比佐雄  北狄の精神を問い続ける人 『若松丈太郎詩選集一三〇篇』に寄せて
    佐相憲一  新鋭こころシリーズ 12 羽島貝詩集『鉛の心臓』 こころはグレーのグラデーション
書評  尾内達也 BRIDGING THE WATERS書評 
    中林経城   『岩本健 詩選集①一五〇篇』 (一九七六~一九八一)
    秋野かよ子  『岩本健 詩選集①一五〇篇』 (一九七六~一九八一)
    山本衞     黒田えみ詩集『わたしと瀬戸内海』 
    田村照視   根本昌幸詩集『荒野に立ちて―わが浪江町』
    東梅洋子   根本昌幸詩集『荒野に立ちて―わが浪江町』
    石村柳三   根本昌幸詩集『荒野に立ちて―わが浪江町』
    悠木一政   見上司詩集『一遇』 
    青木みつお  大塚史朗詩集『千人針の腹巻き』  
    畑中暁来雄  大塚史朗詩集『千人針の腹巻き』   
    速水晃     大塚史朗詩集『昔ばなし考うた』 
    中村花木   大塚史朗詩集 『昔ばなし考うた』 
    上野都    金知栄詩集『薬山のつつじ』    
    志田静枝   金知栄詩集『薬山のつつじ』 
    崔龍源    佐々木淑子詩集『母の腕物語』 
    市川つた   佐々木淑子詩集『母の腕物語』
    松尾静明   青天目起江詩集『緑の涅槃図』  
    山本聖子   青天目起江詩集『緑の涅槃図』
    吉村伊紅美  堀内利美図形詩集『人生の花 咲き匂う』 
    星乃真呂夢  堀内利美図形詩集『人生の花 咲き匂う』 
    木島章   中村純エッセイ集『いのちの源流~愛し続ける者たちへ~』 
    野川ありき 中村純エッセイ集『いのちの源流~愛し続ける者たちへ~』 
    松本高直   原詩夏至歌集『レトロポリス』 
    西野りーあ  原詩夏至歌集『レトロポリス』    
    前田新    新藤謙評論集『人間愛に生きた人びと』
    森徳治    新藤謙評論集『人間愛に生きた人びと』
    宮川達二   稲木信夫評論集『詩人中野鈴子を追う』 
    佐野周一   稲木信夫評論集『詩人中野鈴子を追う』
    鳥居真里子  宮崎直樹著『名句と遊ぶ』   
    藤田夕亭   長澤瑞子句集『初鏡』  
    大垣鹿乃子  長澤瑞子句集『初鏡』
コールサック社 出版活動について
第七回 鳴海英吉研究会・市川の詩人たち ご案内
アンソロジー詩集 『水・空気・食物詩集350篇』公募趣意書 
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編集後記  亜久津歩 
      佐相憲一 
      鈴木比佐雄 
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